ラテン・ヴォーカリスト メキシコ音楽奏者「アルバーソ・チカ」 取材文掲載
サンケイ新聞夕刊「創人たち」vol.7
〜シンプルな音楽、シンプルな生き様。〜

取材・文=村上美香
写真=須佐光浩


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サンケイ新聞夕刊コラム『創人たち』 7回目


シンプルな音楽、シンプルな生き様。

ラテン・ヴォーカリスト メキシコ音楽奏者 / アルバーソ・チカ

阪急梅田の高架下。かっぱ横丁の古書のまちを抜けたあたりに“収穫祭”という隠れ家のようなカフェ・レストランがある。ここに、今月の「創人」アルバーソ・チカが現れる。いったいどんな人なの?どんな音楽をやってんの?プロフィールを聞こうとすると「予備知識はいらんから、とにかく逢いにおいで。アミーゴで、ベサメ・ムーチョなおっちゃんやねん!!」そうやって私を梅田に引っ張っていったのはカメラマンの須佐氏。そうやなあ、人と出逢うのに予備知識なんていらんのかもしれん。私は、はやる気持ちをニュートラルに戻してチカさんの登場を待った。やがて、大きなソンブレロ(メキシコの民族衣装でもある帽子)をかぶり、ギターを胸に抱くようにして、チカさんは歌い始めた。いくつもある席をひとつひとつ丁寧に回りながらの弾き語り。その日のテーブルには、彼女の誕生日なのか、記念日なのか、小さなケーキに蝋燭を灯しているカップルもいたりして、チカさんはさりげなく恋の歌を奏でたり、いっしょに歌ったりしていた。とても素朴な音、というのが第一印象。「僕は今、10才の少年になって弾いていたの。シンプルに聴こえたかもしれないけど、歌というのは昔、日本の和歌のように“言葉だけ”だったのね。やがて、その言葉にメロディがついて、リズムがついた。僕は歌にあまり装飾をつけるのが好きではなくて。シンプル イズ ベストで歌いたい。そして生きたい」メキシコでは愛する女性の家の窓辺に向かって、男がギターを弾く。今夜は月が綺麗だから出ておいでよ、と素直な気持ちをメロディにのせる。ラテン音楽に魅せられ、その第一人者『トリオ・ロス・パンチョス』の歌声に「いつの日か彼らのように歌いながら人生をおくりたい」と願い続けた少年時代。独学でギターを覚えた。美容室を経営しながら音楽活動を続けてきた。しかし、95年の震災を機に美容室を閉鎖。なにもかも無くなった。「あの揺れの中で、神様がシンプルに音楽をやれと言うてくれたんやと思ってます」現在52才。夢は80才になって、ブエノスアイレスの太陽の下で歌うことだと、子供みたいに笑う。大人になって私たちは自分自身を武装しすぎた。言葉も音も、心さえも飾りすぎていたのかもしれない。シンプル、という言葉を久しぶりに思った。店を出ると、装飾だらけの音楽が耳を劈いた。(フリーライター 村上美香 188.j p)


プロフィール
昭和24年広島県生まれ。幼少の頃から音楽に親しむ。音楽人生を決定づけたのは、10歳の頃に出逢ったラテン音楽の第一人者「トリオ・ロス・パンチョス」の来日。レキントギターのメロディ、プライムギターの和音、そしてハイトーンの歌声…どれもが少年の心を強烈に揺さぶった。独学でギターを覚えながら、美容師として独立し、宝塚市に美容室を開業。しかし、20周年を迎える前年の1995年に阪神淡路大震災に遭い、閉店を強いられた。その後は音楽活動1本に絞り、ラテン歌手として活動。今年、12月2日(日)午後7時より、カラオケライブスペース“せぶん”(淀川区東三国大吹橋南詰)にて初のリサイタルが開かれる。問い合わせは06-6399-2008

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