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風工房 染色家 / 斎藤 洋 取材文掲載 サンケイ新聞夕刊「創人たち」vol.18 〜一期一会の一枚を。〜 取材・文=村上美香 写真=須佐光浩 |
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サンケイ新聞夕刊コラム『創人たち』 18回目 一期一会の一枚を。 染色家 / 斎藤 洋 染色家・斎藤洋さんが開催する「野染めの会」に出かける。山々が緑から黄色、赤色とまろやかに色づく季節。秋晴れ、という言葉が空にも、心にもぴったりとくる朝。「野染め」とは、野外に広げた大きな布に、大勢で好きな色を描いていく、ダイナミックな染めの体験教室。20メートルの木綿に竹ひごを張って、「さあ、秋の色を染めようか」と斎藤さん。水をはったバケツに、染料を溶く。「何色がいい?」斎藤さんがたずねると、子供たちは大声で、「赤!」「青!」「黄!」。いいねえ、子供は素直で。大人は、ややこしい色を言うんだよ。赤でもない、茜でもない、紫でもない、夕焼けの空色・・・とかね。赤でいいじゃん、赤で!と参加者を笑わせる。赤でいいじゃん、かあ。「ボルドーワインの色・・・」と言いかけた自分を訂正。大人たちも斎藤さんの笑顔に導かれて、素直な感性を取り戻していく。やがて、40名ほどの参加者がハケを持ち、真白の布に思い思いの秋色を置いた。あっという間に、木綿が野山の色に変わる。太陽にかざすと、ああ、虹の橋みたい。普段は京都の工房でさまざまなアート作品を生み出す斎藤さんが、「野染めの会」をライフワークにしているのは、彼自身が、作家としての、いや、人間としての原点を失わないため。息を吹き返す時間、といってもいい。「“流行”というものは、数年前から仕掛けられたもの。でも、僕らはもっと瞬間的な“今”を呼吸している。紅葉が綺麗だから、今年は赤いコートを纏おうか、というような衝動に答えて、色を染め、一枚の服が生まれる。そんなモノづくりができたら幸せじゃないか?」。そして、そんな一期一会の一枚を、欲する人との出逢いも含め、確かな腕で生み出せるのは、実は、小規模で動ける自分たちのような職人ではないかと付け加える。話し込んでいるうちにススキが揺れ、空が赤く落ちた。季節が変わったら、斎藤さんに故郷の海の色を映した浴衣をお願いしようか、そんなことを思いながら帰路につく。秋晴れの一日。 (フリーライター 村上美香 188.j p) プロフィール 京都・伏見にアトリエ「風工房」を構える染色家。出身は関東地方、全国を放浪してきて京都に流れ着く。居候時代に、たまたまアルバイトで着物の染めの仕事に出会って以来、ひたすら花鳥風月を描いて技術を磨いてきた。独立後は、悠々たる個性がにじみでるオリジナルを多数手がけ、相国寺、無名舎など、寺院・町家などでの作品展を開催。1988年、ニューヨーク・聖ヨハネ大聖堂での大イベント「染布によるコミュニケーション」展が大好評となる。また、ニューヨークで出会ったメモリアルキルト(AIDS/HIVへのメッセージを縫い付けた布)の精神は、その後の作風に大きな影響を与えた。最近では、玉川高島屋、有楽町マリオン、ギャラリーにしかわ、ギャラリーEAST(オーストラリア)、ギャラリー夢雲(奈良県)など個展、その他、全国各地で、大人から子供まで大勢の人たちと長い布を野外で染める「野染め」活動を行っている。 |