勝ち逃げです、と劇団そとばこまちを去った男。小原延之。彼の名をしる人はまだいっぱんてきには少ないと思う。だけど、ここまで社会の事象を逃げずにど・ストレートに表現しつづける劇作家もまた少ないと思う。『丈夫な教室』という作品では、池田小学校の犠牲者となった子供たちのその後を描き、また『橋の上のエチュード』ではJR尼崎の電車脱線事故がおこった日の持ち主を待ち続けている自転車、をひとつのドラマに仕上げた。




今回の『NINE』は、9=ずばり、憲法9条、の意である。こう描けば、かなり社会派な人なのね、と思われるかもしれないけれど、彼の作品は逃げない。逃げてない。ちゃんと重い、が、同時にじんわり、あたたかい。彼の故郷、福井県小浜市が舞台。あのあたりは、朝鮮半島に近いということで、もしかすると電波があちらがわまで届くんじゃないか?という含みをもたせたあるローカルラジオ局の話だった。オープニングはシャンデリアのようにふる、小浜の花火大会だった。花火大会と同じように、北朝鮮の核実験のドーンとした音がこちらまで響いてくるような、そんな複線をもたせてる。個人的に、小浜の花火大会というものをなぜか昔に経験したことがあったので、とてもリアルに、あのシャンデリアのような、もしかすると広島の私には原爆のきのこのような、花火の火の粉がふってきた記憶がよみがえっていた。このごろ、めっきりみることのすくなくなった、ど正面、直球勝負のものがたり。作家の小原さんは、ここのところずっと、ただ、この本を書くためだけに時間を過ごしてきたという。純粋に、ただ、伝えたいことをより伝わるように、もがく。もがきつづける。あくまで、本が主体にある。あたりまえなんだけど、これがなかなか、難しい世界なのですね。ときどきそんなあたりまえのことを忘れそうになって、おっとっと。劇作家で、食っていく。どっかで、そうやって人はプロの力を備えていくのですね。
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