東 學 墨画集『天妖』制作日

墨の女の息吹くまで

ある絵師と、涙もろいプロフェッショナルたちの本造りBLOG

07年5月、パルコ出版より初リリース!!

誰かの本棚に居続ける、シゴト。

「ブログでこうやって本造りを記録していくのはいいね、新しい試みだねえ」といってくださった、桑原茂夫さん。たくさんの画集や詩集を企画編集していらっしゃる方で、東の画集を監修してくださるのですが。私は彼の仕事にとても興味があったから、今回の来阪がとても楽しみだった。今私は、すべての収録作品にタイトルを付けていってるのだけど、それがほぼ固まってきたこともあったので、こんな感じのトーンでいくのはどうですか?という相談をしたり、意見を伺ったりした。「そうだなあ、とても雰囲気のある言葉を選んでいるから、このあたりをもっと膨らませてみようか」。
21kuwa-2.jpg20kuwa-1.jpg
私自身、はやくにコピーライターの師匠から離れて独立してやってきたこともあり、日本の編集者のトップランナーである桑原さんに今出会えたことはとてもうれしい。今の私には“とても学んでみたい人”なのだ。打ち合わせが終わって、今日中に東京に戻らなければいけないという桑原さんを料理屋さんに案内したり、8時45分の新幹線に間に合うよう心斎橋の駅までお送りする間、私はたくさんの質問をしたように思う。「今、5年越しのアリスの本をね・・・」と、御堂筋を歩きながらぽつりぽつりと話してくださって、ほう、アリス・・・不思議の国のアリス?「そう。僕はこれでも日本におけるアリスの本の第一人者だったりするんだ」。ほお、アリス。東京で長年、編集者という仕事をしてきた彼は、どんな仕事場で、どんな本に囲まれて生きているんだろうとか、いろいろ興味深々なわけです。今度東京にいったときに事務所に遊びにいってもいいですか?・・・「いいよ、いいよ、いろんな本を見せてあげるよ」。御堂筋の心斎橋駅までお見送りをして、それから夜に事務所に戻ったら。あらら。1冊だけ、昔からもってる「少女アリス」が本棚の真ん中に勝手に降りてきているのです。たくさんの引越しや模様替えをしてきたのに、昔からもってる「少女アリス」が、久しぶり!と手をあげた。サマンサという金髪の少女をアリスに変身させた沢渡朔さんの写真集。え、これなの?と本当にこれなの?と思って10年ぶりぐらいに本をめくってみたら、最後のページのクレジット筆頭に、桑原さんの名前があった。これが彼の30年前のシゴトだ。「今頃になってさ、30年前の仕事についてなんか書いてくれよ~ってな仕事がぽつぽつあってさ」といった桑原さんの、30年前を勝手にいろいろと思う。1970年代の東京、かあ。そして思うわけ、少女アリスと再会した今の私みたいに、30年ぐらい経って、「天妖」を通じて出逢える誰かがまたいたりするのかな。そうだといいな。そうだといいね。そうしようね。

■ このブログを応援していただけるかたはクリックお願いします ⇒
2006年12月20日 22:56  |  
« 男の視線、女の視線 | トップページに戻る | ゆう亭のゆうさん »
コメントを投稿


コメント


トラックバック

このエントリーのトラックバックURL  http://188.jp/mt/mt-tb.cgi/313

« 男の視線、女の視線 | トップページに戻る | ゆう亭のゆうさん »

これまでのエントリー

東 學 近影

【PROFILE】

東 學 gaku azuma

株式会社 一八八 所属
絵師・アートディレクター
1963年、京都生まれ。
父は扇絵師である東笙蒼。幼い頃から絵筆に親しむ。 アメリカのハイスクール時代に描いた『フランス人形』はニューヨークのメトロポリタン美術館に永久保存されている。 20才でグラフィックデザイナー・アートディレクターとしての頭角を現し、主に舞台やテレビ、音楽関係などのグラフィックワークを手がける。 97年、世界的に活躍する劇作家・松本雄吉にアートワークを認められ「維新派」の宣伝美術に就任。 毎日放送ハイビジョン番組『ポートレート』の映像ディレクションにて、(財)日本産業デザイン振興会主催のグッドデザイン賞・特別賞を受賞。 03年、森田恭通氏プロデュースのニューヨーク高級ジャパニーズレストラン“MEGU”にて装飾絵画(墨絵を中心にした浮世絵シリーズ)を製作。 また、06年“MEGU”の2号店(トランプタワー店)でも装飾絵図を手がけた。 04年『ジャパンアヴァンギャルド~アングラ演劇傑作ポスター100』(PARCO出版)の装丁、 05年『林静一 傑作画集 少女編 淋しかったからくちづけしたの』(PARCO出版)の装丁。 同年、画家・鉄秀とのコラボレーションによる大型作品『麒舞羅』が大阪市長賞に輝く。 アート・ディレクターとしての活躍のみならず、絵師としての活動も各界から注目されている。

※上記内容をWikipediaに投稿しました。