東 學 墨画集『天妖』制作日

墨の女の息吹くまで

ある絵師と、涙もろいプロフェッショナルたちの本造りBLOG

07年5月、パルコ出版より初リリース!!

絵師の筋肉。

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林俊作くんがガクさんところに遊びに来た。俊作くんは、15歳の天才少年といわれる絵師だ。「誰でもピカソ」とかに2回も出たりしてて、うわ、すげえ!!と思っていた子だ。その頃は大阪に住んでいるなんてつゆともしらなくて、世の中にはすごい子もいるもんやなあ、と他人事だったのですが、629をHEPでやった縁もあって、先日のガクさんの展覧会に来てくれて、ほんで、ちょこっと話していたら、大阪のしかも西成だというではないか!!「うわ、ちかいやん。うちは千日前やで、遊びにおいでえや!!」と、連絡先を交換したら、数日後、俊作君からメールがきて、本当に俊作くんは「遊びに」きた。遊びにおいで、といってから、間をあけずに本当に「遊びに来る」やつは、たいしたものだ。うちのテツオしかり、うわ、本当にきた!!というのはすばらしい行動力と愛らしさを持つ。

「俊作くんは、こんなふうに出会った作家の家に遊びに行ったりすることはよくあるん?」
「いや、ないです。おいで、っていわれること普通ないんで」
「あ、そうか。おいで、って私いったもんね」
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絵師の条件というものがあるなら、ガクさんと俊作くんはとめどなく、それを満たした絵師だった。なにが条件って、「絵を描くこと」「絵を描き続けること」「毎日描くこと」だ。誰に見せるためでもなく、ただ、自分のために。そして、努力を怠らないこと。たとえばスポーツ選手が、腹筋やランニングを毎日欠かさないのとおなじように彼らは筆を持つことを休まない。1日休んだら、5日分下手になる、とガクさんはいう。「毎晩、5~6枚はかく。300枚ぐらいためて、また大きな作品を描く」 300枚という数をこなす。絵師の筋肉と瞬発力、持久力を養うために。毎日持っているノートには、日記や本のタイトルの構想案などがびっしり書かれてあった。「タイトル、ええの浮かばんかったから、とりあえず100本ぐらい書いてみた。100本ぐらい書いてみたら、なんかええのんみつかるやろとおもった」 いったいどのぐらいまで、いっきに案を書き上げるの?ときくと「50本ぐらいは、10分ぐらいでかいた。あとは、次の日とか」  300本とか、100本とか、そういう数字は耳できくだけではわかりにくいかもしれないけれど。実際にやってみると、数本書いたあとに、似たような案さえ、浮かばなくなってくることに気がつき、へこむ。10本、20本ならともかく、100本、300本という数字は、砂漠の中でさらに砂を掘って、水を沸き立たせるような行為にも近いことを実感するはずだ。絵を描きたい、コトバをつくりたい、写真をとりたい・・・そういって、この世界に夢を抱いてやってくる私や私たちのどれだけが、日々、「本当にやってる」だろうか・・・と思うのだ。今日も爪先に絵の具を飛び散らせて、「はい、さっきまで描いていたんで」という、丸坊主の俊作くんに、15歳のガクさんをみたような気分になった。

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2008年07月09日 23:25  |  
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東 學 近影

【PROFILE】

東 學 gaku azuma

株式会社 一八八 所属
絵師・アートディレクター
1963年、京都生まれ。
父は扇絵師である東笙蒼。幼い頃から絵筆に親しむ。 アメリカのハイスクール時代に描いた『フランス人形』はニューヨークのメトロポリタン美術館に永久保存されている。 20才でグラフィックデザイナー・アートディレクターとしての頭角を現し、主に舞台やテレビ、音楽関係などのグラフィックワークを手がける。 97年、世界的に活躍する劇作家・松本雄吉にアートワークを認められ「維新派」の宣伝美術に就任。 毎日放送ハイビジョン番組『ポートレート』の映像ディレクションにて、(財)日本産業デザイン振興会主催のグッドデザイン賞・特別賞を受賞。 03年、森田恭通氏プロデュースのニューヨーク高級ジャパニーズレストラン“MEGU”にて装飾絵画(墨絵を中心にした浮世絵シリーズ)を製作。 また、06年“MEGU”の2号店(トランプタワー店)でも装飾絵図を手がけた。 04年『ジャパンアヴァンギャルド~アングラ演劇傑作ポスター100』(PARCO出版)の装丁、 05年『林静一 傑作画集 少女編 淋しかったからくちづけしたの』(PARCO出版)の装丁。 同年、画家・鉄秀とのコラボレーションによる大型作品『麒舞羅』が大阪市長賞に輝く。 アート・ディレクターとしての活躍のみならず、絵師としての活動も各界から注目されている。

※上記内容をWikipediaに投稿しました。